重症心身障害児の看護における人工呼吸器管理:デイサービス看護師の疑問を解決
重症心身障害児の看護における人工呼吸器管理:デイサービス看護師の疑問を解決
重症心身障害児(以下、重症児)の看護は、高度な専門知識と経験を要する業務です。特に、人工呼吸器管理や酸素投与に関する判断は、子どもの生命維持に直結するため、看護師の責任は重大です。今回のQ&Aは、デイサービスで重症児の看護に携わる看護師の方からの切実な疑問にお答えします。人工呼吸器の装着基準、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)の解釈、そして適切な対応について、具体的なアドバイスを提供します。
この記事では、重症児看護の専門家である私が、あなたの抱える疑問を解決し、日々の看護業務に役立つ情報を提供します。安心して子どもたちのケアにあたれるよう、一緒に学びを深めていきましょう。
質問:重症心身障害児をデイサービスで子供を見ている看護師です。基本的なことかもしれませんが、知識がなくて教えていただきたいのですが、1日3時間だけ人工鼻で過ごしそのあとに人工呼吸器を装着している子供がいます。平常値は、spo2 78~82%、低下時人工呼吸器装着し主設定→副設定で酸素3Lの指示で90%の状態だと動脈管が閉塞するから酸素中止し主設定にするように指示あります。人工呼吸器装着前にspo2 84~92%の場合人工呼吸器装着する必要があるのか、また、装着したら79~81%まで低下したのですが、本人の身体に負担がかかっているのではないか、理由もわかりませんでした。デイサービスで主治医に確認もできないため、看護師で相談して対応していますが、本当は、主治医に後日確認すればよいのですが、それをさせてくれない職場で看護師たちも適当で、深く考えないから怖いなと思いながら対応しています。詳しい方いたら教えていただきたいのですが、こんな場所で聞くのはおかしいと思っています。よろしくお願いいたします。
この質問は、重症児の人工呼吸器管理に関する重要な疑問を含んでいます。以下、詳細に解説していきます。
1. 人工呼吸器装着の必要性:SpO2と状態の評価
まず、人工呼吸器を装着する基準についてです。SpO2の値だけではなく、子どもの全身状態を総合的に評価することが重要です。具体的には、以下の点を考慮します。
- SpO2の値: 質問者様のケースでは、平常時のSpO2が78~82%と低めです。これは、呼吸状態が慢性的に悪い可能性を示唆しています。SpO2の目標値は、子どもの状態や基礎疾患によって異なりますが、一般的には88%以上が望ましいとされています。しかし、個々の状態に合わせて、主治医が目標値を設定しているはずです。
- 呼吸状態: 呼吸回数、呼吸の深さ、努力呼吸の有無などを観察します。陥没呼吸やチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)が見られる場合は、早急な対応が必要です。
- 全身状態: 意識レベル、活動性、食欲、排尿・排便の状態なども評価します。元気がない、ぐったりしているなどの症状があれば、呼吸状態が悪化している可能性があります。
- 既往歴と基礎疾患: 呼吸器疾患、心疾患、神経疾患など、基礎疾患がある場合は、呼吸状態が悪化しやすいため、注意が必要です。
今回のケースでは、SpO2が84~92%の場合に人工呼吸器を装着する必要があるかどうかは、上記の要素を総合的に判断する必要があります。SpO2が84%を下回る、または呼吸状態が悪化している場合は、人工呼吸器の装着を検討すべきです。
2. 人工呼吸器装着後のSpO2低下:原因と対応
人工呼吸器を装着した後にSpO2が79~81%まで低下した場合、いくつかの原因が考えられます。
- 人工呼吸器の設定: 人工呼吸器の設定が適切でない可能性があります。換気量、酸素濃度、PEEP(呼気終末陽圧)などを調整し、最適な状態にすることが重要です。
- 肺の状態: 肺炎、無気肺、気胸など、肺の状態が悪化している可能性があります。聴診や胸部X線検査などで確認する必要があります。
- 呼吸器系の問題: 気管チューブの位置異常、痰の貯留、気管支痙攣なども原因として考えられます。吸引や体位変換などで対応します。
- 循環動態: 心不全やショックなど、循環動態が悪化している場合も、SpO2が低下することがあります。
SpO2低下の原因を特定し、適切な対応を行うためには、医師や呼吸療法士と連携し、詳細な評価が必要です。また、SpO2が低下している間は、子どもの状態を注意深く観察し、早期に対応することが重要です。
3. 酸素投与と動脈管閉塞:注意点
質問にあるように、「酸素3Lで90%の状態だと動脈管が閉塞するから酸素中止」という指示があるとのことですが、これは新生児や乳児における動脈管開存症(PDA)の管理に関連する可能性があります。動脈管は、胎児期には肺に血液を送る血管ですが、出生後には自然に閉鎖します。しかし、未熟児や特定の疾患を持つ子どもでは、動脈管が閉鎖しないことがあります。過剰な酸素投与は、動脈管の閉鎖を促進する可能性があるため、酸素投与量を調整することがあります。
ただし、重症児の場合、酸素投与は低酸素血症を改善するために不可欠です。酸素投与を中止する判断は、医師の指示に従い、子どもの状態を慎重に評価した上で行う必要があります。酸素投与の中止や減量は、SpO2の値だけでなく、呼吸状態や全身状態を総合的に判断して決定します。
4. デイサービスでの対応と職場環境
デイサービスで主治医に確認できない状況は、非常に困ります。しかし、子どもたちの安全を守るためには、以下の対応が必要です。
- 情報収集: 主治医の指示内容や、子どもの既往歴、現在の状態に関する情報を、できる限り詳しく収集します。
- 記録: 呼吸状態、SpO2、人工呼吸器の設定、酸素投与量、全身状態などを詳細に記録します。
- 看護師間の連携: 経験豊富な看護師や、呼吸器管理に詳しい看護師に相談し、情報共有を行います。
- 緊急時の対応: 万が一、状態が悪化した場合は、救急搬送などの対応ができるように、準備をしておきます。
- 職場への働きかけ: 主治医との連携が取れるように、職場に働きかけます。必要であれば、上司や経営者に相談し、改善を促します。
また、看護師たちが深く考えないという状況は、非常に問題です。定期的な勉強会や研修を実施し、知識や技術の向上を図る必要があります。また、疑問点や不安な点を気軽に相談できるような、風通しの良い職場環境を整備することも重要です。
5. 専門家からのアドバイス
重症児の看護は、高度な専門知識と経験が求められます。以下に、専門家からのアドバイスをまとめます。
- 継続的な学習: 呼吸器管理、酸素療法、薬物療法など、関連する知識を継続的に学習し、最新の情報を把握することが重要です。
- 多職種連携: 医師、呼吸療法士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、多職種と連携し、チーム医療を実践することが重要です。
- 患者家族とのコミュニケーション: 患者家族とのコミュニケーションを密にし、子どもの状態や治療方針について、情報共有を行うことが重要です。
- 自己研鑽: 積極的に研修会や学会に参加し、自己研鑽に努めることが重要です。
今回のケースでは、主治医との連携が取れないという問題がありますが、まずは、記録を詳細に残し、看護師間で情報共有を行い、緊急時の対応を準備することが重要です。また、職場に対して、主治医との連携体制を構築するよう、働きかけることも必要です。
重症児の看護は、大変なことも多いですが、子どもたちの成長を間近で見守り、その笑顔に触れることができる、やりがいのある仕事です。今回のQ&Aが、あなたの看護業務の一助となり、子どもたちの健やかな成長を支える力となることを願っています。
参考資料:
- 日本呼吸療法医学会
- 日本小児科学会
- 関連書籍(人工呼吸療法、小児看護学など)
【結論】
重症心身障害児の人工呼吸器管理は、SpO2の値だけでなく、全身状態を総合的に評価し、適切な対応を行うことが重要です。主治医との連携が取れない状況でも、情報収集、記録、看護師間の連携、緊急時の対応、職場への働きかけを行うことで、子どもたちの安全を守ることができます。継続的な学習と多職種連携を通じて、看護師としての専門性を高め、子どもたちの健やかな成長を支えましょう。
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